株式会社継手意匠店

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Villa della Pace

PART.6「岩本さんという人」

岩本さんが建築の先輩に連れられて僕の店に初めて来てくれた時は、まさか一緒に仕事をすることになるとは全く思っていませんでした。正直に言うと、1mmも。僕らがやっているようなある程度高価格帯のレストランを続けていく上では、交わらない世界の人だなと。東京で建築家有志グループの展覧会で再び岩本さんに会った時も、岩本さんだけ明らかに違う空気を放っているのを感じました。もはや輪の中に入れてないというか。

それまで、僕の中での「建築家」のイメージというのは「建築とは/芸術とは」といったアカデミックな話をされている方々で、どちらかというと「やってもらう/与えてもらう」といった存在でした。だからこそ岩本さんを見て「こういう人もいるんだな」と新鮮に感じました。そしてそれは僕の深いところに抱えていた「自分には何もない」というコンプレックスと、どこか呼応していたようにも思います。

「自分の家をお願いするなら、この人にお願いしたいな」とその時に思いました。“とことん相談できる人”というか、押し付けられる家ではなく、自分たちが納得できる家づくりができそうだなと思ったからです。移転する僕の店までお願いしようと思ったのは、妻が手伝っていた七尾のゲストハウスでの彼の仕事ぶりを見てのことです。彼のクリエイティヴへの真摯さは凄まじいです。妥協を許す業者には容赦なく吠えます。そして情熱的であると同時に、石橋を叩いて叩いて渡るタイプの人だということも、安心感がありました。

今回のプロジェクトを通して、僕はやっと“自分が進むべき方向”というか、 “本当に作りたい料理”というものが定まりました。ぼんやりしていたものが、ちゃんと見えたというか。そういう意味ではこの建築計画は、岩本さんとともに歩んだ思索の旅であったようにも思います。

今後、岩本さんを誰かに紹介するときは人を選ぶと思いますね。「なんとなくオシャレに」というくらいの中途半端な気持ちなら、辞めといた方がいいと伝えます(笑)。今回僕は“施主の覚悟”というものを確かに感じました。それは金銭的な覚悟だけではなく。お金を払った上で、現場とも職人さんとも、そして自分とも施主が向き合わないと、本来納得できるものなんて絶対にできないはずなんです。施主自身にその覚悟さえあるのであれば、僕は絶対岩本さんをおすすめします。もし僕の事例が岩本さんの仕事の参考になるのであれば、予算でもなんでも開示するつもりです。これだけ一緒に考えてくれる人は、多分、岩本さん以外いないと思うから。